KMT92

最近はKaggleも興味ある。

クロスオーバー 試験デザイン

クロスオーバーデザインの基本的理解(2of2)

投稿日:

クロスオーバーデザインについての、備忘録も兼ねた勉強メモ。2回目でこれで最後です。

あくまで「基礎」ということで、実薬の効果を示すためのプラセボ対象2×2デザインを例にとります。

本稿よりも基本的なことを第1回にまとめていますので、是非ご確認下さい。

 

免責事項

記載内容の正しさは保証いたしません。免責事項に関して詳しくはabout/accessをご確認ください。

 

クロスオーバーデザインでは何をどのように比較しているのか?

クロスオーバーデザインでの比較の概念について説明いたします。

対照に対する実薬の効果を示すための比較試験ですが、クロスオーバーデザインはこの比較を行うために実薬投与期と対照投与期ではなく、第I群と第II群の比較を行います。

(第I群と第II群それぞれの実薬投与期間どうし、対照投与期間どうしを合算して解析を行うと考えている人がいますが、これは間違いです。第I群か第II群かをランダム割り付けをしているわけですから、第I群と第II群の比較をするのが当然ですよね。)

では、第I群と第II群の比較を行う事で、なぜ実薬と対象の評価を行うことになるのでしょうか。

まず考え方として、各群各期には以下のような効果が乗っていると考えます。

  • 治験薬の効果(Treatment effect):実薬・対照の効果です。
  • 時期効果(Period effect):投与期による効果です。第I期・第II期のような時期に依存します。
  • 持ち越し効果(Carryover effect):第II期に残った、第I期の効果です。

各群、各期に働く効果は、下図のようになります。(バラツキは省略しています。)

$\mu$:全体平均(Grand mean)

$\pi_i$:時期効果(Period effect)

$\tau_j$:治験薬の効果(Treatment effect)

$\lambda_k$:持ち越し効果(Carryover effect)

上記の記号を用いて、ざっくりとした理解を数式の形で説明いたします。(本当にざっくりですので、症例レベルでの計算と群レベルでの計算を区別していません。ちゃんと知りたい方は、学習文献として後記した、清書をご確認下さい。)

 

まず、第1群について第I期(実薬)から第II期(対照)を引き、差分を取ります。

$$(\mu+\pi_I+\tau_A)-(\mu+\pi_{II}+\tau_B+\lambda_1)=\pi_I-\pi_{II}+\tau_A-\tau_B-\lambda_1\tag{1}$$

続いて、第2群について第I期(対照)から第II期(実薬)を引き、差分を取ります。

$$(\mu+\pi_I+\tau_B)-(\mu+\pi_{II}+\tau_A+\lambda_2)=\pi_I-\pi_{II}+\tau_B-\tau_A-\lambda_2\tag{2}$$

ここで第1群と第2群の比較として、式(1)と式(2)の比較を考えます。平易に式(1)から式(2)(共に右片)を引いて考えましょう。

$$(\pi_I-\pi_{II}+\tau_A-\tau_B-\lambda_1)-(\pi_I-\pi_{II}+\tau_B-\tau_A-\lambda_2)$$

$$=2\tau_A-2\tau_B-\lambda_1+\lambda_2\tag{3}$$

さらに、式(3)の結果を2で割ると治療効果の差が取り出されます。

$$式(3)\times\frac{1}{2}=\tau_A-\tau_B-(\lambda_1+\lambda_2)\times\frac{1}{2}\tag{4}$$

式(4)を見ると、実薬から被験薬の差を引いた効果($\tau_A-\tau_B$)がうまく取り出されていることがわかると思います。そして、合わせて持ち越し効果も残っていることがわかるでしょう。Washout期間で持ち越し効果をゼロに限りなく近づけることが大切であることがわかると思いますが、さらに言うと第1群の持ち越し効果と第2群の持ち越し効果が等しければ、打ち消しあって影響はなくなります。

※最初に述べたとおり、症例レベルの計算と群レベルでの計算を区別していませんが、連続量の平均値の比較でいえば、式(1)と式(2)は症例内で第I期と第II期の差をとる計算となります。式(3)は、式(1)と式(2)のそれぞれの平均どうしの差を計算しています。詳しくは【学習資料】にあげた資料をご確認頂くのが良いと思います

 

なお、比較するのはあくまで第1群と第2群ですから、対応の無い検定を行います。

 

**

 

このように、クロスオーバーデザインは、デザインレベルで個体間誤差を打ち消せる優れたデザインだと思います。しかし、統計的にエレガントなデザインは得てして、使用を誤る可能性が大きかったり、条件を満たすことが難しかったりするものです。

この記事を読んだのみでは、全然理解が足りないと思いますので、きちんと学んで、適切に試験を実施して下さい。

 

【引用文献】(1of2にて引用)

EMA、「GUIDELINE ON THE INVESTIGATION OF BIOEQUIVALENCE」、20Jan2010

【学習資料】

クロスオーバーデザインの学習に優れた資料を紹介致します。

折笠秀樹、「クロスオーバー試験の計画及び解析」、Jpn Pharmacol Ther(薬理と治療)vol.44 no.9 2016

折笠先生の資料です。この資料以外にも、折笠先生はデザイン関連の資料・書籍等を多数発表されていますから、学ぶ人は色々当たってみてください。

NCSS Statistical Software Chapter 235「Cross-Over Analysis Using T-Tests」

https://ncss-wpengine.netdna-ssl.com/wp-content/themes/ncss/pdf/Procedures/NCSS/Cross-Over_Analysis_Using_T-Tests.pdf

例数う設計用のソフトウェアのマニュアルのようですが、非常にわかりやすくまとめられています。数式が丁寧なので、このブログの数式についてより深く知りたい方は、こちらを当たると良いと思います。

※学習資料は気が向いたら書き足します。

-クロスオーバー, 試験デザイン

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


関連記事

クロスオーバーデザインの基本的理解(1of2)

クロスオーバーデザインについての、備忘録も兼ねた勉強メモ。 あくまで「基礎」ということで、実薬の効果を示すためのプラセボ対象2×2デザインを例にとります。   免責事項 記載内容の正しさは保 …